下水飯店 "け" 前編

2014.07.01 Tuesday

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    Text By Satoshifaction

    軽蔑。お待ちかねのゴダール特集です。軽蔑の眼差し。いくつかのうち、ぱっと思い出すKさんの話をさせてください。

    女子とへらへら喋るのはダサい。根本がそれで、ただの思春期がいまだに尾を引いているところがあるが、そんな感じでさえない中学生活を終え、高校に入って進研ゼミの漫画の人たちみたいになったらどうしよ。とこっそりドキドキしていて、漫画にあるように「スタートダッシュが肝心」を心がけ、撃沈した話です。

    UNOのジェルでキメた入学まもない粉ふき芋だった頃、既に自己紹介タイムでやらかしクラスメイツに黙祷みたいなかなり長めの沈黙を強いてしまった。とうとうジョジョにでてくる「ザ・ワールド」というスタンドが使えるようになったか俺も、とは到底思えなかった。「若さゆえ」のせいにして、「若さゆえ」の立ち直りの早さを見せ、それなりに楽しく過ごしていた。しかし虎視眈々と一発逆転を夢見ていた。

    ある日、勉強もスポーツもできて性格も良くてかわいいKさんの噂が、我が第3セクターにも届いてきた。

    「ここだ」

    ファースト・インパクトに全てを掛ける。ひとこと目はなんて言おう。媚びへつらわず、かといって上から目線でもなく・・深呼吸からの、ヨッシャ

    偶然なにかのきっかけで目の前にあのKさんがいた。
    中学校にはまるでいなかったタイプの、ティモテじゃないやつを使ってそうな感じがぷんぷんで、眩し酔いでオエッとなりかける位のアーバン文法だった。

    ルーズソックスはナウシカタイプのストンとしたやつではなく、ホルモンぽいというか、鳥皮串タイプだった。
    恋愛漫画「BOYS BE…」で、佳境に差し掛かった時マガジンのページ端に「あの娘まであと3センチ!」と書いてあったのはこういう意味だったのかイタバシ先生。やるなら今しかねぇ、中ちゃんオイラやるよ。BGMは北の国からで邦衛が歌っていた、長淵の「西新宿の親父の唄」。

    そこで俺はちっぽけな勇気を振り絞り、事もあろうか

    「Kさんって、すっっっごいヤリ○ンらしいねっ!」

    と言い放ってしまったのだ……(≧∇≦)ノ こんな笑顔で。

    神に誓って悪意は1mmも無い。
    言葉の意味を知らないウブなあの頃。TVのスーパージョッキーで、無理難題をこなすたけし軍団の「THE ガンバルマン」というコーナーがあったのを覚えているだろうか。勉強もスポーツもなんでも頑張る、「タフマン」みたいな力こぶ、ガッツのある人、やり手。ヤリマンとはやり手+ガンバルマン、そんな意味だと勘違いしていたのです…ああ、日曜の昼は新婚さんいらっしゃいからアタック25を見ていればこんなことにならずに済んだのに。初対面の馬の骨に、なんでそんなこと言われなければいけないのか。てゆーかまず「お前誰?」と思ったはずだ。告る勇気なんてハナからない。

    その時の貴女の目、決して忘れません。[卒業式の呼びかけ風に]

    驚きの後にぐっとこらえるような[男子]、

    怒りを?[斉藤]、

    それとも涙を?[竹下]、

    そしてゆっくりと目を細め[女子]、

    顔を紅潮させて[にきび]、

    紅潮だけに[出っ歯?]、

    校長先生![出っ歯?]、

    (せーの)炊き出しの汁、マズかったです![PTA]
    その時の目が[Kさん]、
    軽蔑!!!![全員]


    以後の記憶はありません。あれ、なんかマズったかな?くらいに思っていたけど、思い返すとこんな感じです。

    なんとかヘコヘコすり寄ろうと無理をした結果、最悪なことになってしまった。年端もいかぬ前途洋々な乙女のこころに傷をつけてしまった。それ(ヤリ○ンの意味)を知った俺は謝りたいと思いつつも近寄り難く、ウジウジしている間に学年が上がり同じクラスになった。
    本当にいい人でして、年賀状をもらえた時はとても舞い上がった。なんか高級な紙で、それは素敵だった。お年玉つきハガキじゃないな、とも思った[軽蔑!]。
    もうあのことも忘れとるかもな、だったらいいのにと期待したりもした。
    でも実はほんとにヤリ○ンやったらどうしよ[軽蔑!!]。

    確信に迫れぬまま、2月3月。やっぱチョコはもらえなかったな[当たり前]。
    どうするどうする…

    「このままじゃ笑顔で卒業できないお」耳元でベッキーが囁く。
    「今さら蒸し返すのもどうかと思うよ」野党は静粛に!

    そうして放課後、たまたま教室に二人しかいないチャンスが訪れる。

    「ここだ」

    後編へ続く→


    Movie Review Extra "クルージング"

    2014.06.24 Tuesday

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      Text By Seiji Nakashima

      このブログでは主に新作映画を取り上げておりますが、当たり屋的にぶつかった過去作品で大怪我をしたので報告します。アル・パチーノ主演、エクソシストの監督でお馴染みウィリアム・フリードキン監督作、というツートップながら未DVD化、1979年公開のサスペンス、"クルージング"

      1977年にグリニッジ・ヴィレッジ周辺で起こった連続殺人事件。被害者が全員ゲイ、遺体を袋に詰めこんで遺棄した事から通称"バッグ・マーダーズ"と呼ばれる惨劇に基づいた実録映画。



      クルージングは隠語で"ハッテンバ"の事。同性愛者がパートナーを求めてクルーズするという意味なんですね。

      ホシを挙げるべく、"ハッテンバ"に潜入捜査するのがノンケのアル・パチーノ。しぶしぶ潜入を開始したアル・パチーノですが、犯人を追うにつれてその倒錯した同性愛の世界にズブズブとはまりはじめ....。


      あまり触れられていない様ですが、このアルパチーノの風貌がルー・リードにそっくりなのです。

      アル・パチーノ(左)とルー・リード(右)


      ルー・リードが性同一障害(ホモセクシャル)なのは有名な話で、自己分裂に耐えられず電気ショック療法によるアクロバティックな治療を行った程。ルックス、並びにアイデンティティー・クライシスに悩むキャラクターも意図的に演出してるとしたらフリードキン師匠、恐れいりますm(__)m

      そして大きな見どころは2点。1つはソフト化の妨げとなっているであろうハードゲイ描写。警帽、レザーファッションに身を包んだガチムチがそこらで繰り広げる格闘の様なまぐわい。R指定用語なんてそこかしこに溢れ、ア*ルセ**ス、フィストフ**ク、お縛り、乳首ツイストなど、むせ返る現場の匂いまで漂う男達の饗宴に脳みそが激しくシェイクされます。


      公開時失神者を続出させたという代表作、エクソシストのコメンタリーでフリードキンは、

      「自己の価値観と精神状態に疑問を抱かせる作品に仕上げたかった」

      と言うとおり、彼の作品にはある種異常なパッションが注入されてます。フリードキン本人がパンイチでハッテンバに潜入したという鬼神のごときリサーチ力が生む肉々しい映像の数々は強烈な印象を残し、観るものの常識、日常を揺さぶり、無縁だと思われていた世界、ねじれの生じた奇妙な冒険への扉をこじ開けさせてくれます。。これぞフリードキンイズムであり、サスペンス/ホラー映画の醍醐味でしょう。

      もう1つの見どころは鑑賞後に知った驚愕の事実

      本作のモデルになった"バッグ・マーダーズ"事件の犯人ポール・ベイトソンなる人物は、実は事件を起こす前、フリードキンのエクソシストに役者として数秒出演していたのです。

      後の殺人者ベイトソン出演シーンを再生


      悪魔に取り付かれた少女リーガンの身体検査(この検査過程がまたリアルでグロい)でX線技師役を担当したベイトソン。フリードキンがこの事実を知ったのはクルージング映画化の前後どちらかは定かでは無いですが、なにやら強烈な因果を感じさせずにいられない、、、悪魔に取り憑かれてたのは少女リーガンだけでは無くベイトソン自身もだった、という何とも奇妙で恐ろしい事実。その後容疑者ベイトソンは1件の殺人で実刑判決を受けるも、その他の連続殺人の容疑では証拠不十分で立件されておらず、"バッグ・マーダーズ"は未解決事件として闇に葬られています。

      よって本作もひじょーーーに嫌な後味を残して幕を閉じます。そして余韻を残しまくるラストショットはノンケだった筈のアル・パチーノが丁寧に髭をそり、鏡の中の自分にうっとり見とれている姿。

      またしても ルー・リード"TRANSFORMER=变化""のアルバムジャケットを思わずにはいられないのでした。





      坂本慎太郎さんも褒めてたフリードキン"キラー・スナイパー"も倒錯しまくってて最高です。

      Movie Review "ホドロフスキーのDUNE"

      2014.06.15 Sunday

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        Text By Seiji Nakashima

        アレハンドロ・ホドロフスキーの伝説とフィルモグラフィーについてはググれば実に沢山の情報を得られるし、本作と7月公開の新作"リアリティのダンス"にむけて作られたUPLINXのチラシが愛蔵版にしたい程気合い入りまくっててざっとその歴史を把握する事ができます。

        気合いたっぷりのチラシ群



        映画史を塗り替え世界を変えた、かもしれない未完のスペースオペラ、

        "ホドロフスキーのDUNE"

        を追うドキュメンタリー。



        タイトルに"ホドロフスキーの"と付いているのは、ホドロフスキー版が頓挫した後、
        デヴィッド・リンチによって"DUNE 砂の惑星"というタイトルで制作、公開されているから。
        その完成度がまあ、そのぉ、、、(田中K栄)。パシフィック・リムみたいなCGわっしょいな映画ができちゃう時代に観るとシュールなコントにしか見えない。ほのかなリンチワールドを漂わす不気味な演出と不可解なストーリーがリンチファンの間でカルト化している様ですが、"秘密のケンミンショー"を録画して2度観る(拷問)くらいの時間がある場合を除きオススメしません。


        ホドロフスキーの未完作はDUNEだけではありません。前作からの20数年間、マリリン・マンソンの名がクレジットされた"エル・トポの息子"デヴィット・リンチとの共作が噂され絵コンテが公開された"THE KING SHOT"等々、、、

        M・マンソンとKING SHOTの絵コンテ


        噂が流れ、その後消息を断つ度に「またか、、、」と頭を垂れ、「何故だ、、、お前は狂言回しなのか、、、」と腰まで伸ばした髪をばっさり切るルーチンワーク。そんなホドロフスキー・フリークス達へのアンサーとなるべくして産まれたのが本作。

        ホド版DUNEの制作に名を連ねた面子は余裕で想像の範疇を超えてきます。

        △スタッフ

        絵コンテ:メビウス
        言わずと知れたフランス、バンド・デシネの神様。宮崎駿はじめ日本のアニメーターへの影響も大。

        建築デザイン:H・R・ギ−ガー
        英プログレバンド、EL&P(エマーソン、レイク&パーマー)"恐怖の頭脳改革"ジャケット、そして映画"エイリアン"の男根クリーチャーデザインでお馴染みの暗黒デザイナー。漫画"ベルセルク"のゴッドハンドのキャラデザインは確実にギーガーの影響があるでしょう。

        特殊効果:ダン・オバノン
        同じくエイリアンの特殊効果担当。と、いうより個人的には"バタリアン"の監督、と言った方が遥かに親しみが沸く。

        音楽:ピンク・フロイド
        プログレッシヴ・ロックの頂点を極めたバンド。

        △キャスト

        ・ミック・ジャガー
        ローリング・ストーンズのフロントを務める不老不死のロックンローラー。

        ・オーソン・ウェルズ
        オールタイム・ベストムービーで何度も首位を獲得する"市民ケーン"の監督。

        ・ダリ
        芸術家、シュールレアリズムの代名詞。自称天才の元祖髭男爵

        ・ウド・キア
        アンディ・ウォーホールラース・フォン・トリアーの2大奇人監督に愛される怪優。

        などなど。人選を書き連ねるだけで頭髪がごっそり抜け落ちる様な面子をホドロフスキーは、"ここはコイツであそこはアイツ"と金に糸目を付けず世界を飛び回り直接交渉を続けます。ホドロフスキー曰く彼等は

        "魂の戦士"。妥協一切無し。

        と同時に何故こんな無謀なキャスティングをするのか不思議でしょう。そりゃ無残に空中分解してもおかしくないと思いますよね。

        しかし、ホドロフスキーの名を世界に知らしめた"エル・トポ""ホーリー・マウンテン"をご覧になった事があれば、これは決して絵空事だけでは無かったのだと今でも信じる事ができる筈です。
        異様で奇怪な映像の洪水、極彩色が放つマジックリアリズム、禅、宗教、輪廻といった哲学的テーマを想起させるメタファーの数々。
        これらが渾然一体となって観客の網膜から侵入し、脳内LSDをドバドバ噴出、ストーリーを咀嚼する事を許さず観念的映像で混乱と陶酔に陥れる唯一無二の世界観。「どちらかと言えば良く映画を観る方かな」という自分でも、後にも先にもこんな体験は二度と無いと思ってます。ホドロフスキーのイマジネーションに限界は無いのです。



        映画としての"ホド版DUNE"は当然ながら資金難にみまわれ、絵コンテを含む膨大な脚本を残して未完に終わりました。が、

        "ホドロフスキーが巡るDUNE"

        という名の未記録映画として、ホドロフスキー主演の壮大な物語は完成していたとも言えるのではないでしょうか。

        スペース・オペラの金字塔"スター・ウォーズ"、"エイリアン"、"ブレード・ランナー"等々、未完成作品であるにも関わらず、歴史的傑作群に多大な影響を与えたという事実が何よりの証拠。

        ホドロフスキーは言います。

        「DUNEの中止もイエスだ。失敗が何だ?だからどうした?あん!?」

        インタビュー中子供の様にはしゃぎ、ネコをなでなでするかわいいおじいさん。ホドロフスキーは変人でも狂人でもない。創造力を栄養に生きるタフでピュアでとってもクレバーな人懐っこい人でした。

        「現実は常に踊っている」のです。

        Movie Review "インサイド・ルーウィン・デイヴィス"

        2014.05.30 Friday

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          Text By Seiji Nakashima

          アカデミー賞、カンヌ映画祭etc...映画祭のプライズハンターことコーエン兄弟の最新作。
          ジョージ・クルーニー主演のオー・ブラザー以来の音楽映画、しかもボブ・ディランに影響を与えたと言われる人物を描いたという事で公開初日の早朝、鉛の様に重たいまぶたをアイプチして臨んだ
          インサイド・ルーウィン・デイヴィス。



          1961年、ニューヨークはグリニッジ・ヴィレッジで暮らす無名のフォークシンガー、ルーウィン(オスカー・アイザック)。フォーク一筋、商業的な音楽を敬遠しながら弱小レーベルでその日暮らしを続ける堂々巡りの毎日。

          今回も役者陣が魅力的。
          "ドライヴ"で容赦無くボコられたオスカー・アイザック
          同じく"ドライヴ"でオスカー・アイザックの妻を演じてから俺KB48不動のセンターを誇る
          キャリー・マリガン
          そしてルーウィンの音楽仲間にはジャスティン・ティンバーレイク
          唯一のコーエンファミリー、ジョン・グッドマンはまことちゃんみたいな髪型で登場。

          そして流れ者であり大海を彷徨うルーウィンのメタファーとして登場するネコ、その名もユリシーズ。

          ルーウィンのモデルは実はこの人。

          デイヴ・ヴァン・ロイクとネコ



          最高にカッコイイのがジャスティン・ティンバーレイクとのセッション。噛み合わないルーウィンに苛立つJTがかわいい。

          ミスターケネディ♫俺は宇宙になんか行きたくないよ♫



          優れた実力を持つ(エゴが強いとも言える)アーティスト程、自身の作家性と商業主義に折り合いをつけるのは難しい。アーティストの神秘性、フォークが有するリリックの重みにこだわり一向に花を咲かす事ができないルーウィンもその1人。ボブ・ディラン登場以前/以後が持つフォークシーンの在り方、時代も大きく彼の運命を変えたでしょう。

          しかし、同じ様な背景を持つディランが"時代の代弁者"として支持されたのは、ランボー、ビートニク、ミュージカル等々、様々な先端アートを咀嚼し、微細で時に大胆なスタイルチェンジを繰り返すその嗅覚、器用さにこそあります。アルバム「時代は変る」でまさに時代を変える事ができたのはディランのインテリジェンス(才能)に他なりません。

          ミュージシャンに限らず、世の中で圧倒的マジョリティを占めるのは"ディラン"な人々では無く"ルーウィン"な人々。高尚な理想を持ちながらも現実に折り合いをつけ、描いていた夢に少しづつ距離置きはじめながら年月を重ねていく、、、、

          本作にはコーエン兄弟の定石ともいえるコメディからの狂気狂気からのコメディ(そして無残な死)、は限りなく身を潜めている様に見えますが、"朽ち果てる夢"という残酷な現実を冷静沈着に描き、裏路地にひっそりと黒い影を潜める作家性はきっちり注入されてます。


          見どころの補足。ラスト、あの人が登場します。痺れる。

          あとキャリー・マリガンが黒髪にイメチェン、終始冴えないルーウィンにワンナイト・メイク・ラヴで孕まされた(かも)結果、「Asshole!!」「Fuck You!!」を連射。

          「発情したらコンドーム2枚重ねとけ」
          「むしろもうずっと頭からすっぽり被って全身コンドームでおk」
          「触るな、腐る!!」

          と信じられない罵声をあげ世の中のM男の欲望を満たしてくれます。

          帰宅後に♫

          Movie Review "ブルー・ジャスミン"

          2014.05.23 Friday

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            Text By Seiji Nakashima

            腰巾着、虎の威を借る狐。人の権威にすがって何者でもない己を正当化。なのにプライドだけは天空よりも高く都合の良い嘘で武装するDQN。いますねいますね。貴方は誰の顔が思いつきますか?

            齢78歳。年齢と同じくらいの映画を世に送り出してきたまさに巨匠にして絶倫監督、ウディ・アレンの最新作ブルー・ジャスミンを鑑賞。



            実業家の妻としてバリバリのセレブ生活を送るジャスミン(ケイト・ブランシェット)が夫(懐かしのアレック・ボールドウィン)の不正事業&逮捕によりどん底生活に転落。義理の妹の安アパートに居候を決め込むも、持ち前の悪しきプライドにより庶民生活に馴染めず自我崩壊していくというシニカル・コメディ。

            オールド・タイミーな曲にのせて前振り一切無しの潔いタイトルクレジット。今回もウディ・アレン節炸裂。間髪いれず主人公ジャスミンの"嫌な女"っぷりを5分たらず見せつける冒頭で勝敗は決まったも同然。栄光(夫の逮捕前)と失墜(逮捕後)を交互に交える"ブルーバレンタイン"スタイルで尚且つテンポも良い。

            何が凄いって今年のアカデミー主演女優賞を獲得したケイト・ブランシェットの微細な演技!!


            簡単に言ってしまえば、国民栄誉賞級に"性格どブス"な役を演じる事への抵抗が微塵も感じられない凄み。寿司屋のカウンターで隣り合わせた成金キャバ嬢の自慢話を事故的に聞かされている様なリアルな感覚。加えて発言の端々で感じ取れるジャスミンの歪みっぷり、患ったウツによるモノローグ(独りごと)は完全にホラー映画。こ、こいつイイ所が一個もねー、、、
            「今から一緒に、これから一緒に殴りに行こうか」、とシャブ&アスカの名曲が鳴り響く程ヤな女を熱演。


            それでもこれがコメディ映画としての軽快さを保っているのはジャスミンの対比として描かれる義理の妹の存在。かなりエキセントリックな顔をしいる庶民派で、明らかに教養も低そう。(というか主要出演者全員マヌケ)。付き合う男は暑苦しいイモ野郎ばかり。ジャスミンにとっては"負け犬"な人生に写るそんなライフスタイルをこの妹は生き生きと謳歌しているんです。ジャスミンよりも遥かに幸せそうだ。


            幸せってのはひとそれぞれ千差万別。地位と名声と金。豪華な家具にクローゼットいっぱいの洋服。追い求める事は決して悪ではないですが、重要なのはその過程だろうジャスミンさん。

            「これまでは幸いにも仕事しなくてもよい環境に恵まれていたのよ」

            と言い放つジャスミンに共感の余地は無い。最後まで学ぶ事も成長もしないまま、

            "そして周りには誰もいなくなった"

            ラストシーンは同情無用、悲痛を通り越して笑ってしまうブラック・コメディの極地!!!!

            しかしまあウディ・アレンの撮る女優さん達はいつもとても色っぽいなあ、、、。


            5分で書けるウディ・アレン